[横浜F・マリノス インタビュー前編]新たな環境にフィットするには? ~移る側、受け入れる側を経験したプロから学ぶ適応術~
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転職とは新たな環境にフィットしていくことがセットになります。新天地で順風満帆なスタートを切るためには、適応力が大きなカギを握っているといっても過言ではありません。
それは毎年、選手の入れ替わりが激しく、人材流動性の高いプロサッカー選手の世界でも同じです。
では彼らは移籍を決断した際、どのような意識を持って新天地でのチャレンジに臨むのでしょうか。それに対し、新たなチームメートを受け入れる側はどのような配慮を持って接するのでしょうか。
ランスタッドがオフィシャルパートナー契約を結ぶ横浜F・マリノスの選手インタビュー前編では、喜田拓也選手、天野純選手、松原健選手の3人を招き、『新しいクラブで馴染むための工夫』をテーマに、移籍する側、受け入れる側の心掛けについてお伺いしました。(以下、敬称略)
聞き手:大林洋平
「最初が肝心。一緒に楽しむことを心掛けました」(松原選手)
――前編では『新しいクラブで馴染むための工夫』とのテーマでお話いただきます。喜田選手は移籍した経験がないため、該当しないのですが…
喜田:僕、帰った方がいいですか?(笑)
松原:帰さないよ。
天野:なんか、今日は健、愛情深いな(笑)
――喜田選手には後ほど受け入れる側の立場としてお伺いさせてください。まずは松原選手にお伺いします。プロをスタートさせた大分トリニータからアルビレックス新潟、そしてアルビレックス新潟から横浜F・マリノスと2度の移籍を経験されていますが、新たなチームメートに受け入れてもらったり、新たな環境に馴染むために何を心掛けましたか。
松原:大分から新潟へ移籍した時は歳の近い選手が多く、年代別代表チームでも一緒にプレーをした選手がいたので、比較的に早く溶け込めたと思います。ただF・マリノスに移籍した際は、その年の新加入、既存を含めて知っている選手がほぼいませんでした。どう馴染もうかなと思案していたのですが、シーズン開幕前のキャンプ中、チームメートが桃鉄(桃太郎電鉄)を始めたので、僕も任天堂DSを買いに行って、みんなと仲を深めました。
僕の場合はゲームでしたが、どのようなツールでもいいので、一度はみんながやっているものを一緒に楽しむことが大事だと思います。サッカーの面では毎日のトレーニングの中で意見をすり合わせていくことを意識していましたね。
松原 健(まつばら・けん)
1993年2月16日生まれ、31歳。大分県出身。180cm/77kg。ポジションはDF。11年、大分トリニータユースからトップチームに昇格し、アルビレックス新潟を経て17年に横浜F・マリノスに加入。在籍8年目と“古株”となり、今季から副主将に就任した。無類の車好きで毎年、日産自動車とのコラボCMに出演。今年は日産セレナの魅力を発信している。背番号は27。
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――松原選手がF・マリノスに加入された17年当時、大先輩である元日本代表の中澤佑二さんや栗原勇蔵さんが在籍されていました。そういった目上の方とは、どのようなコミュニケーションを取られていたのでしょうか。
松原:そのお二方がどう思われていたかは分かりませんが、自分的にはうまくやっていけていたと思っています。僕が想像していた以上にとても優しかったですね。名を残した選手であれば、あまりフレンドリーでないのかなとも想像していました。なので、最初が大事と気を引き締めて、練習初日を迎えたのですが、良い意味で肩透かしを食らいましたね。トレーニング中でもポジティブな声掛けをしてくれました。今は自分が迎え入れる側になったので、彼らの姿を意識しています。
――やはり最初が肝心でしたか?
松原:挨拶はしっかりしようと、意識して入ったのを覚えています。初めて顔を合わせたのはトレーニングジムで、佑二さんや勇蔵くんら年上の方に挨拶したのですが、(6学年上の飯倉)大樹くんは端の方で体幹トレーニングをしていました。しかも顔がとても若く見えたので、「あの子はユースだな」と思い、そのままトレーナールームに行きました。その後、大樹くんの方から「飯倉です」と挨拶しに来てくれた時、「俺、このチームで終わったな」と思いましたね(笑)。
喜田:大先輩をスルーして、トレーナールームに行ったのね(笑)
松原:大樹くんの方から挨拶をさせてしまったのですが、めちゃくちゃ優しく対応してくれて助かりました。
「F・マリノスの基準を示した上で個性を引き出す歩み寄りを意識しています」(喜田選手)
――逆に喜田選手はプロ入り後、一貫して受け入れる側です。加入してくる選手のバックグラウンドもキャラクターも個性豊かだと思うのですが、どのようなことを意識していますか。
喜田:まずF・マリノスの色や基準を示すことは大切だと思っています。その上で新しく入った選手のキャラクターや個性を尊重したい気持ちもあります。一方通行ではいけないと思うので、歩み寄りは意識していますね。選手各々の良さややりたいこと、特長を存分に生かしてあげたいので、それをどう引き出すかを考えながらコミュニケーションを取るようにしています。逆にベタベタするのが苦手な選手もいます。選手によってはコミュニケーションの取り過ぎも良くないので、その使い分けや接し方は気をつけています。
喜田 拓也(きだ・たくや)
1994年8月23日生まれ、30歳。神奈川県出身。170cm/64kg。ポジションはMF。小学生から横浜F・マリノスのアカデミーで育ち、トップチームに昇格した13年からF・マリノス一筋の“Mr.トリコロール”。19年からは6年連続、主将を担う。長年、後輩として“イジられキャラ”が定着していたが、チーム年長者となってからは、後輩へのイジリが少し強めの傾向がある。背番号は8。
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――現在、天野選手と松原選手はとても仲が良いですよね。
喜田:最初、お互い全く距離感をつかめてなかったですけどね(笑)
天野:僕は最初から受け入れるタイプではないです。
喜田:それが面白いじゃないですか。純くんみたいな人もいるし、健くんのアプローチや僕のようなアプローチもあります。全員が同じアプローチをする必要はありませんよね。
――先日、天野選手からF・マリノス2年目で後輩の井上健太選手が松原選手を少し怖がっていると伺いました。
松原:多分、健太は僕のことが嫌いです(笑)
喜田:そんなことはないよ。
松原:ねぇ、純くん。
天野:多分そうですね。僕にそう言ってました(笑)
喜田:でも健太は最初、「純くんのこと、マジ分かんねぇ」って言ってましたけどね。
松原:僕も来た当初、純くんは全然、話してくれなかったからね。
喜田:純くんは一回、様子を見ますよね。
天野:うん。一回、試すね。
喜田:僕は少し話したりしますけど、純くんは最初から話さないよね。
天野:自分からは行かないね。
喜田:一回、みんなで絡んでいるのを遠くから様子を見て、「そうゆうヤツなんだ」とうかがうタイプです。
天野:半年ぐらい話さないこともあるね(笑)。最近、健太と仲いいけどね。
――一方、松原選手は練習前、在籍年数が浅い選手たちとリフティングすることをルーティンにされています。そこに松原選手の気遣いを感じます。
松原:これまでやっていた選手がどんどんいなくなって、新入りが入ってきている感じで、その流れを続けているだけです。
喜田:新しく入ってきた選手にはありがたいでしょうね。何気ないコミュニケーションだけど、立派なコミュニケーションのツールの一つだし、若い選手は嬉しいと思います。
「最後はその選手次第。そうやって自分もやってきました」(天野選手)
――少し話を戻しますと、先ほど喜田選手が「F・マリノスの基準」と仰られていましたが、その「基準」とは、リーグ優勝した19年や22年のシーズンを指標にされていると思います。ただ、この2年の間にも選手の入れ替わりがあった中、今季はなかなか新旧戦力の融合やその「基準」の浸透に苦心されているように見えます。そこに葛藤はありませんか。
喜田:葛藤しかありません。ただ、色々と考えますが、選手を代えられるわけでもありませんし、良い意味で、そこについてはなんとも思っていません。今いる選手でやるしかないので、スーパーな選手がいないのであれば、よりチームで戦わないといけません。逆に近年、そのように戦ってきたクラブでもあります。どうみんなでもがいていくか、ですね。ただ、理想に追いつけていないのが現状です。僕たちにも、クラブにも、するべきアプローチがある中で、選手発信でどう見せていくかは、いつも考えています。
天野 純(あまの・じゅん)
1991年7月19日生まれ、33歳。神奈川県出身。175cm/67kg。MF。高校まで横浜F・マリノスのアカデミーで育ち、順天堂大を経て14年に加入。面倒見のいい兄貴分として、試合前日には後輩たちを、ウナギを食べに連れて行くのがルーティン。最近は井上健太にマンマーク気味に慕われ、練習ではグラウンドに一緒に入ってくる頻度が高い。背番号は20。
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天野:僕はあまり気にしていませんね。良い意味で「ついてこいよ」というスタンスです。ピッチの中でも外でも、いくら口で言っても最後は自分がやるしかありません。そうやって自分もやってきました。助けるところは助けますが、そこはプロの世界。最後はその選手次第だと思っています。
松原:僕はプレーで何かをめちゃめちゃ示せるタイプでもありませんし、声で引っ張れるわけでもありません。状況に応じて、他の選手に伝えることはありますが、そこはまだ自分の中で模索しているところです。それよりは自分をもっと良くしないといけない思いの方が強い。自分にフォーカスしている部分が大きいです。
天野:矢印は自分なんだね。
――松原選手が仰るように、内側に矢印を向けるのがF・マリノスの良さであり、強みです。ただ今シーズン、時折、外向きになっている時があるように感じられます。
喜田:それが組織の難しさではないでしょうか。良くない時や思い通りに行かない時に何ができるのか。組織の中に良いモノを広げることは簡単ではありませんし、時間がかかります。その半面、悪いモノは枝葉に分かれて一瞬に広がってしまいます。そういったことが増えれば、成績にも表れます。ただ、一人でどうにかできるものではありません。まずは個人の基準の高さや意識の高さがないと「F・マリノスの基準」を維持することは難しいです。毎年、人の出入りがある環境なので、そこにも難しさを感じています。
【インタビュー後編では『なぜF・マリノスなのか?』をテーマにお伺いします】
執筆・編集・構成/大林洋平
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