【セカンドキャリアインタビュー】第二回 机龍之介氏 “自分”がやる理由を大事にすれば面白さとやりがいが生まれる
アスリートのセカンドキャリアについて考えるインタビュー第二弾は、日本スカッシュ界の第一線で活躍を続ける机龍之介選手をお迎えします。
17歳で全日本王者の座に就いた机氏。トップアスリートとして精力的に活動しながら、日本にスカッシュを広めるためのさまざまな取り組みを行なっています。そんな机氏が夢見る意外なセカンドキャリアとは……?
尚、インタビュー動画については、ランスタッド公式YouTube(アスリートのセカンドキャリア特集ページはこちら)にて公開していますので、合わせてご覧ください。
ゲストスピーカー
机龍之介氏
プロスカッシュ選手/スカッシュ全日本選手権最年少王者(通算7回優勝)
両親や兄の影響で幼少期からスカッシュを始め、2014年に史上最年少となる17歳3カ月で全日本選手権優勝。海外ではメジャースポーツであるスカッシュを日本でも普及させるべく、SNSでの発信や初心者向け体験会を主催するなど幅広く活動を展開。
日本ランキング1位、PSAランキング(世界ランキング)62位 ※記事掲載時のランキングです
ファシリテーター
ポール・デュプイ
ランスタッド・ジャパン代表取締役会長兼CEO
カナダで生まれ、人生の半分を日本で過ごす。2013年ランスタッド・ジャパン入社。ランスタッド・インドのCOO・CEOを経て、2021年より現職。3歳からアイスホッケーを始め、インド時代にはヒマラヤ山脈の僻地でボランティアコーチとしての活動も経験。
プロスカッシュ選手と『デスクトップ』としての活動
デュプイ:ランスタッドのポール・デュプイです。今日のゲストは現役でバリバリ活躍中のスカッシュ選手、机龍之介選手です。机さんの現在のアスリートとしてのキャリアや、今後のキャリアと挑戦についてお伺いしたいと思います。
それでは、本日のスペシャルゲストをお迎えしましょう。今日はよろしくお願いします。
机 :よろしくお願いします。
デュプイ:本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ですが、おめでとうございます。昨日*1すごいことがありましたね。
机 :そうですね、昨日まで全日本選手権に出場していて、自身7度目そして2連覇となる結果を残すことができました。
デュプイ:今日はその話も含めてお伺いしたいですね。このシリーズは、次のキャリアについてというテーマがメインになりますが、「より人の可能性を引き出す」ためのシリーズでもあります。
さて、クエスチョンタイムに行きましょう。現在どんな活動をされていますか? そして、どうしてスカッシュの道を選んだのか改めて教えてください。
机 :僕は現在現役のプロスカッシュプレーヤーとして、世界を舞台に世界ランキングの向上や、大きい大会でメダルを取ることを目標に戦っています。プロスカッシュプレイヤーとしての道を選んだきっかけとしては、もともと両親と兄の影響があります。小さい頃からやってきて、自分自身を最大限に発揮できるのがスカッシュプレーヤーとしての道だと思ったので、プロとして世界の舞台で戦うことを選びました。
あともう1つは『デスクトップ』という活動をやっています。僕は「机」という名前なのですが、英語で「デスク」、「トップ」は「頂き」っていう意味があるので「デスクトップ」。世界ではスカッシュってそれなりに認知されている競技なんですけど、国内だとまだまだマイナーで。お世話になってきた日本スカッシュ界をもっと盛り上げていきたいなってことで、競技者としてだけではなくいろんな形で『デスクトップ』として活動しております。
デュプイ:非常に興味深い、ユーモアがあるネーミングですね。私は日本語を勉強しているので、「机」と言ったらもしかしてその机かなと。覚えやすくて良いですね。
ところで、ラケットについて教えてください。まず、持ってみた最初の印象はものすごく軽いんですね。例えば5歳のとき使っていたラケットは今に比べたらどうですか?
机 :5歳のときはまだ体が小さくて力もなかったので、体に対して大きく感じていたしラケットを引きずってる印象でした。ですが今は本当に軽くてコンパクトだなっていう感じです。
スカッシュコートはテニスコートの半分ぐらいのサイズで、壁があるっていうのが特徴的です。ラケットが大きすぎたり重たすぎるとなかなかその範囲で動くことができないので、基本的にはこのサイズ感、重さになります。実はこれが昨日優勝したときに実際に使っていたラケットなんです。
デュプイ:それはすごいですね!
私はアイスホッケーをやっていて日本でもプレイをしているんですが、日本人は本当にスピーディーという印象を持っています。サッカーもそうですよね。スカッシュも日本人に向いているんじゃないですか?
机 :そうですね。けっこう向いているスポーツなのかなと思います。日本人の場合、バドミントンとかもそうですが、戦略的な戦い方を得意とする選手も多いです。そういったラケット競技、室内競技っていうのはけっこう強いので、本来ならもっともっと日本人がトップに行ってもおかしくないのかなって思います。
未来の選手が活躍できる環境と裾野の拡大を目指して
デュプイ:日本人に向いているスカッシュを、もっと発展させるために何かアイディアはあるんですか?
机 : 僕が思うのは、良いジュニアの選手はいっぱいいるんですけど、その子たちが続けられる環境っていうのが本当に無いんです。僕自身は今サポートしてくださる企業があるから、不自由なく現役生活を送れているんですけど。そういった環境が今まで無かったりとか、これからも保証されている訳ではないので。
ジュニアの選手とか、これからトップで活躍していく選手たちがもっともっと競技に集中できるような環境やサポート体制があるといいのかなっていうふうに感じています。
デュプイ:私はInstagramとかTwitterとかSNSをやっているんです。机選手もやってますね。この間拝見したのは、新潟県長岡市でのスカッシュイベントです。月1回体験イベントがあるんですよね? SNSも含めて、取り組んでいる活動をぜひ教えていただきたいです。
机 :そういった活動はすべて『デスクトップ』の活動の範囲でやらせてもらっています。スカッシュは実際にやってみたり見てもらうと「面白い」と思ってもらえることが非常に多いと、僕自身感じています。SNSはテレビと違って、自分が影響力を持って発信できる媒体だと思うので、僕はファッションも好きなのでファッションに関する投稿も上げたりとか、色んな切り口でスカッシュを知ってもらうきっかけを作っていけたらなと。
僕はスカッシュを5歳の頃からやってきて、本当にいろんな方にお世話になってきました。なのでスカッシュ愛好者の方たちにはイベントを通して僕自身の技術だったり経験とか、あとは今後のお話をさせていただいて、月1回の体験会は本当にやったことない人向けの切り口として行っています。
僕のSNSを通じて、少しでもスカッシュに興味のある方々が体験できる場所と時間を提供できればと考えています。
デュプイ:そうですか。今まで取り組んできた活動はかなり影響力があると思うんですけど、例えば机さんのおかげでスカッシュを始めたっていう人も多いんじゃないですか?
机 :どうなんですかね。でもやっぱり体験会を通してスカッシュを知って、スクールに通うようになったという方もいらっしゃるので、地道ではあるんですけどやってきて良かったなっていうのは今感じているところですね。
デュプイ:絶対影響していると思います。特に次世代の子どもたちですね。机選手を憧れの先輩、チャンピオンとして、追いかけてくる子たちもいると思います。
セカンドキャリアの夢は……主夫!
デュプイ:かなり先のことになりますが、例えば今後年月を重ねていってあるタイミングで競技からの卒業を考えたときに、セカンドキャリアとして次にやりたい仕事は何かあるんですか?
机 :僕は主夫をしたいです。家事とかが好きですから。家事をやりつつ、自分で時間をコントロールしてできるような仕事をしたいなっていうふうに思ってます。
その中でやっぱり日本スカッシュ界に関われる仕事をしたいです。海外だと結構スカッシュコート×カフェとかバーとかがあって、そういったものも日本でやっていけたらいいなと思いますし。あと現役選手として他のスポーツ選手と関わっていく中で感じたのは、現役を続けるのが難しくて辞めてしまう選手というのはスカッシュ界に限らず多い。そういった選手と企業のマッチングができるようなサービスをやりたいなとか。
あとはファッションが好きなので、アパレルとか好きなものも事業としてやっていけたらいいなというふうに思っています。
デュプイ:いいですね。スカッシュをやりながら色んなことを考えていらっしゃるんですね。主夫というのはちょっとびっくりしました。
『デスクトップ』とのコラボレーションで洋服を作ってるんですか?
机 :そうですね、『デスクトップ』の活動とスカッシュを知ってもらうきっかけ作りになればということで。本来なら生地にもこだわって1から作りたかったんですけど、今は選手活動も活発なので、既存のアパレルアイテムに『デスクトップ』のデザインを取り入れたアイテムの販売を開始しました。
デュプイ: いいですね。例えばこのラケットは色がかっこいいですよね。それに合うファッションアイテムなんかも提案できたら素敵ですね。
替えが利かない“自分”がやる理由を大切に
デュプイ:ランスタッドは世界一の人材会社です。私たちの仕事の目的は「人の可能性を引き出すこと」。何よりも私はリーダーとして、皆さんが輝いて仕事ができる環境を作ることが大切な役割になります。
最近は少し回復してきましたが、コロナもあったりして仕事に悩んでいる方も多いですよね。特に悩んでいる人にアドバイスをしてほしいです。ストレスの発散の仕方でも、何でもいいんですけど一言いただけますか。
机 :不安なときにやることとしては、音楽が好きなので自分の好きなアーティストの曲を聞きます。
「自分がやりたいこと」とか「何をするべきか」を考えていくと、やらなきゃいけないことややるべきことって意外と多かったりするので、それで逆に不安がなくなっていくのかなというふうに思います。
デュプイ:なるほど。私は色んなスポーツ選手と関わっているんですが、その競技に本当に命を掛けている人もいるんですよね。そういった人でも、例えば試合に負けたり、段々自信がなくなってくると、いったん休むそうです。そうすると戻ってきたときに逆に強くなる場合もあるんですよね。
もっと一生懸命やるんじゃなくて、ちょっとラケットをおいて、1週間とか2週間とか休んで別のことをやって、また戻ってきたら強くなると。そういったことはあるんですか?
机 :そうですね。僕も世界を舞台にプロツアーを回っているんですが、日本が大好きなので、海外に行ってると早く日本に帰りたくなってしまうんですよね。世界に行ってる間は競技者として“オン”の状態だとして、日本に帰ってきているときは“オフ”の状態。
そのオフのときには、もちろんトレーニングや練習に励むんですけど、自分が将来やりたいことにつなげるために色んな活動をすることが、ある意味僕にとっての休みというかオフになるので。それで良い感じにオンとオフの波を作って、競技実績につなげられてるのではないかなと思います。
デュプイ:とても良いアドバイスですね。スカッシュを初め、スポーツというのはもちろんメンタルもありますが、基本的に体がメインで、そこからマインドも使ったり戦略もあったり。他のことをやると体だけでなく、クリエイティブな想像力やビジネスマインドを養うことでリフレッシュになる訳なんですね。
アスリートだけでなく、人生のターニングポイントを迎えてセカンドキャリアについて考えている人に向けて、ランスタッドがサポートできるアイディアはありますか?
机 :アスリートが現役で活動してる間に最大限力を発揮できるような環境の提供や、サポートしてくださる企業とのマッチングをしていただきたいというのもあるんですけど。そういった機会を通してアスリートがセカンドキャリアに向けてやりたいことを思いつくと思うので、何か相談にのってあげたりとか、企業を紹介していただけたらアスリートとしては非常に嬉しいのかなって思います。
デュプイ:ぜひ。また今度お願いすることがあると思います。
私が思うのは、スポーツというのはプレイすることだけが目的ではないですよね。みんなが集まることで、コミュニティが生まれていきます。スカッシュのコートもそうですよね。みんな見に来てくれて、それでスカッシュ以外の活動をしたり。アイスホッケーもそうです。リンクでみんな友達になって、今度は親同士が友達になって、段々コミュニティが広がっていきますよね。やっぱり同じようなことはあるんですか?
机 :そうですね。幼い頃、スカッシュを一緒にやっていた選手たちは今社会人になって色んな仕事をしてるので、SNSを通してつながっています。僕はまだ現役としてやっているので、試合結果を見ると連絡してくれて。
『デスクトップ』の活動を知って色んなところに掛け合って、活動をサポートしてくださるきっかけを作ってくれているので、やっぱりスポーツってそういったコミュニティ作りとしては非常に長けているなって思います。
デュプイ:本当にスポーツの素晴らしい面ですね。
最後の質問、すごい大きい質問になりますが。机選手にとって、大切にしていることは何ですか?
机 :デスクトップっていう活動もそうですし、現役選手としてもそうなんですけど、“自分”がやる理由を大切にしてます。と言うのも、スカッシュを日本国内で広めていきたいっていう方たちはもちろんたくさんいらっしゃると思います。ですが、言い方はあまり良くないかもしれませんが、一般の愛好者がやるよりトップ選手がやる方がもっともっといろんな方に知っていただくきっかけを作りやすいと思うんです。
僕はそういった「日本国内でスカッシュを広げていきたい」っていう方のプラットフォームとして頑張っていきたいなと思い『デスクトップ』っていう活動をしています。そこで“僕自身”がやる理由っていうのを大事にすれば、そこに独自性が生まれたりとか、面白さとか生まれてくると思うんです。なので、そこを強く持ってやるのが大切だと考えています。
あとは普通に仕事をしていて思ったりするんですけど、替えが利くってのは結構寂しいことだなって。アスリートをやっていると自分じゃないといけないっていう場面が多くあるんですけど、普通に仕事してると、「机さんがいないから代わりにやってね」っていう場面があります。そういう時、替えが利くっていうのは寂しいなと感じる。やはりそこに“自分”がやる理由を大事にしておくと、もっと自分の仕事にやりがいを感じたり、責任感を持って仕事ができると思います。
SEKAI NO OWARI「RPG」でモチベーションを高める
デュプイ:素晴らしいですね。さてこれが最後、一問一答のコーナーです。簡単に質問をするので、直感で答えてください。
2番目に好きなスポーツはなんですか?
机 :サッカーですかね。
デュプイ:一番好きな曲はなんですか?
机 :僕は高校生の時から、SEKAI NO OWARIの「RPG」という曲を試合前に聞いて、モチベーションを高めています。
デュプイ: いいですね、今度聞きます!好きな言葉はなんですか?
机 :「憧れを憧れで終わらせない」という言葉を大切にしています。
デュプイ: 逆に嫌いな言葉はなんですか?
机 : 嫌いな言葉!?「ギブアップ」ですかね。
デュプイ: わたしはですね、「しょうがない」が嫌いですね。休日はなにをして過ごしていますか?
机 :友達と会うことが多いのと、あとは服の中でも古着が好きなので見に行ったりすることが多いですね。
デュプイ:もし1ヶ月同じものを食べるんだったら?
机 :ラーメン!全部好きなんですけど・・・毎日食べるんだったら塩かな。さっぱりしている方が食べやすいかなって。
デュプイ:マイブームはありますか?
机 :やっぱり服ですかね。いまはSNSでいろいろな方のファッションを見るのがマイブームというか、ずっと見ていますね。
デュプイ:海外で試合をしたり、たくさん旅をしたりしていると思いますが、世界で一番好きな街はどこでしょうか?
机 :韓国ですね。文化の違いがあまりないので、安心しますね。
デュプイ:一番よく使う絵文字はなんですか?
机 :絵文字!?なんだろうなあ・・・にこっとしたマークが逆さになったものをよく使っています。
デュプイ:好きなハッシュタグはなんですか?
机 :一番使っているのは#DESKTOPですかね。やっぱり皆さんに知っていただきたいので。
デュプイ:次は難しい質問ですけど・・・テニスか卓球か?
机 :テニスですかね。ラケットのサイズとかもテニスの方が近いですし。
デュプイ:では、最後の質問です。机さんにとってハッピーな場所は?
机 :なんだかんだ一周回ってスカッシュコートなのかなと思います。やっぱりそこに立てていることが自分らしさだし、自分自身だと思うので。なんだかんだ嫌な思い出もたくさんあったり、緊張したりもするんですけど、やっぱりスカッシュ選手としてコートに立てているのが一番ハッピーな時間ですし、一番ハッピーな場所なのかなと思います。
デュプイ:よくわかります。わたしもアイスリンクに乗った途端に笑顔になります。
机さんはまだまだお若いですが、いろいろな経験をして壁を乗り越えてきて、とにかく前向きで。「can do mind」を持つのは大事ですね。次の試合はいつですか?
机 :4月の頭から、また海外ツアーに参戦します。
デュプイ:応援してます!ランスタッドは、アスリートだけではなく、悩んでいる方が、新しいキャリア、セカンドキャリアを始めることをサポートします。human forward.というキーワードがあるんですけれども、みんなが輝いて仕事ができる、好きな仕事ができる、ハッピーに仕事ができる、そういった仕事を紹介するのが、わたしたちの一つの約束です。
今日は本当に素敵な話をありがとうございました。これからもアスリートのセカンドキャリアについて勉強していきたいと思っています。今回のゲストは机龍之介さんでした。
机 :ありがとうございました。