【セカンドキャリアインタビュー】第一回 寺川綾氏   まずチャレンジ。そこから「自分らしさ」を追求する道を選ぶ

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アスリートのセカンドキャリアについて考えるインタビュー企画。

現役で活躍したアスリートが、競技を卒業後のセカンドキャリアに悩むことが多いというデータがあります。そこで、アスリートとして活躍したゲストをお迎えしセカンドキャリアについて考え、アスリートを応援していくインタビューをお届けします。

尚、インタビュー動画については、ランスタッド公式YouTube(アスリートのセカンドキャリア特集ページはこちら)にて公開していますので、合わせてご覧ください。


ゲストスピーカー

寺川綾氏

水泳 ロンドンオリンピック銅メダリスト/スポーツキャスター
3歳より水泳を始め、アテネオリンピック200m背泳ぎ8位、ロンドンオリンピックでは100m背泳ぎと4×100mメドレーリレーの2種目で銅メダルを獲得。2013年12月に競技からの卒業を宣言。「報道ステーション」のスポーツキャスターを務める二児の母。

 

ファシリテーター

ポール・デュプイ

ランスタッド・ジャパン代表取締役会長兼CEO
カナダで生まれ、人生の半分を日本で過ごす。2013年ランスタッド・ジャパン入社。ランスタッド・インドのCOO・CEOを経て、2021年より現職。3歳からアイスホッケーを始め、インド時代にはヒマラヤ山脈の僻地でボランティアコーチとしての活動も経験。

 

競技生活の卒業とセカンドキャリア

デュプイ:早速ゲストをお迎えしましょう。寺川綾さんです! よろしくお願いします。本当に寺川さんに会えるのを楽しみにしてたんですよ。私も3歳からずっとアイスホッケーを長くやっています。お越しいただきありがとうございます。

寺川さんは水泳のスペシャリストとして活躍され、現在もスポーツキャスターとして活躍されていて、私もテレビで見ています。さあ早速質問していきましょう。

寺川 :ありがとうございます。よろしくお願いします。

デュプイ:まず、現在どんなお仕事をしていらっしゃいますか。

寺川 : はい、現在はスポーツキャスターと、あとは水泳を広げるために、どちらかというと今まで泳いできた人を教えるのではなく、初めてプールに入るような人たちと一緒にプールに入ったりとか、そういう活動させていただいたり。あとは自分のコレクションの水着をデザインさせていただいています。

デュプイ:幅広いですね。でもやっぱりプールの近くにあるんですね。オリンピック選手を卒業したら次何をするか、いろんな可能性があったと思います。いろいろ悩みがあったと思うんですけど、どうしてその道を選んだんですか。

寺川 : 私は恥ずかしながら、自分で現役を「本当にここで終わりにしよう」っていう瞬間までセカンドキャリアについてまったく考えていなかったんですよ。なぜなら本当に集中して最後をやり終えたいっていう気持ちがあったので。水泳以外のことはもう何も考えずに終えて、そこから例え時間がかかったとしても何か新しいことにチャレンジしていけたらいいなと思って現役をずっと続けて来たので。

デュプイ:なるほど、とにかく水泳しか考えてなかった。

寺川 :悪い例だと思います、だから(笑)。

デュプイ:善し悪しと思うんですけどね。スポーツ選手はやっぱりすごい目標を大切にしていますから。
でもゴールがあって、ゴールを達成すると次は何やるかってみんな悩みますね。競争するのはけっこう体にも負担があって、何歳までできるか・次はどうするか。難しさもあると思うんですね。卒業すること自体はその時は悩んでたんですかね?

寺川 :それがまったく悩みなく。それまでは「次はこの大会で」とか「次のオリンピックで」とか、目標をどんどん自分で持てていたんですけど、本当にいざ辞めようかどうしようかって思った時は、自分に次の目標を問いただした時にスラスラ出てこなかった。もう何も出てこなかったし、水泳選手として達成したいなぁっていうのがなくて、すごく清々しい気持ちになったので、ここで辞めてもきっと後悔ないだろうなって自分で思えたので。こういう時が辞める時なんだなっていう感じでした。

デュプイ:自然に見えてくるっていう感じなんですかね。有名なスポーツ選手が一回引退して、もう一回競技に復活するってありますけど、それは全然考えてないですか。

寺川 :まったくなかったですね。けっこう周りのコーチの方にも誘っていただいて、「まだできると思うから戻ってきなよ」って言われたんですけど、「もうご馳走様です」って感じです。

デュプイ:なるほどいいですね。「立つ鳥跡を濁さず」、好きな言葉です。これからの若手や子どもたちもそうだし、水泳をやりたいとか好きな人を応援したり、それが今の楽しさだと思います。

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感謝しながら頼って、お互い支え合いながらやっていく

デュプイ:ランスタッドは世界一の人材会社ですが、私たちがやっていることはマッチングです。能力を発揮できる仕事ができたら幸せですね。もちろん経済的な部分もあるんですけど、それだけじゃないです。目的があって毎朝起きて。寺川さんと同じように、オリンピック向かうという目的があって、卒業するとまた次の目標があるという。やっぱりマッチングの大切さを私たちは信じています。

もう1つは、みんな平等に仕事ができること。海外で仕事できる、ジェンダー関係なく仕事ができる。最近は日本でもD&Iという言葉、「ダイバーシティと多様性」「LGBTQ」などなどが言われています。
スポーツの世界は今考えるとどうですか。世界でいろんなところで大会に出たりしていましたが、ダイバーシティについてどう思いますか。

寺川 :「男女」っていう意味で考えると、水泳競技は完全に分かれて試合には出るじゃないですか。でも練習ではみんな一緒なんですよ。だからまったくその境目がなく。よく言われるのが、本当に水着って布切れ1枚で、それでプールの中でみんな同じように練習するので、完全に“仲間”なんですよね。

男女とかまったく関係なく、あとどんな国の選手が武者修行で来ても一緒にそこに入ってみんなで練習するっていうのが水泳のスタイルなので。その時はあまり深く考えていなかったんですけど、ジェンダーの問題が上がった時に、「あ、意外と私たち意識しなくても当たり前のこととしてやってたんだな」という風に気がつきました。

デュプイ:そうですか。なるほど、よく考えたら水泳の方がいろんな意味でダイバーシティなのは当然のスポーツですね。アイスホッケーなんか男女別々で、一緒にやることはほとんどないですね。

International Women's Day(国際女性デー)という、世界中で女性をサポートするための記念日が毎年3月にあります。日本で活躍する女性として、これから夢を叶えたい日本人の女性に対して何かメッセージはありますか。

寺川 :経験して感じていることは、ありがたく人に頼ること。私は結婚して子どもがいて仕事をして、家のこともやらなきゃいけない。子どものこともやらなきゃいけない。仕事も全部ひっくるめて私の人生なんですが、それをすべて一人でやろうとするととても苦しくて、しんどくて、もう完全にキャパオーバーなんですけど。いろんな人に支えてもらって助けてもらってるからこそ成り立つんですよ、自分が。

人を巻き込んで、頼って「お願いね」っていうことが、日本の女性はけっこう苦手な人が多いんじゃないかな。そういう部分で困ってる人もたくさんいるんじゃないかな、ありがたくみんなに頼ってお互い支え合いながらやっていけばいい方向に向いてくるんじゃないかなと思っています。

デュプイ:感動ですね。ビジネスの世界の中ではこういう考え方ですね、「1+1=3」。同じように、コミュニティがあって1人と1人が3になる。おっしゃったように、ありがたく、という「感謝する」のも大切ですね。

あとは相談すること。悩みがある時やどうしても分からないとか、やっぱり相談した方が良いですよね。どうですか今までやって来た道で、例えば相談する場合はあったんですか。

寺川 :ほぼ答えは決まってるんです、自分の中で。だけど最後のひと押しが何か欲しい時に、いろんな人に話を聞いて、良くも悪くもみんなの話を聞いて、自分の意思を決めるっていう。

デュプイ:意見を聞くんですけども、自分の中ではもう「これでいこう」と思ってる。ですけど、確かめるために。

寺川 :そういう感じ。最終確認ですね。

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アスリート自身を知ることができる取材の現場が大好き

デュプイ:次は「仕事」について。私はカナダ人で、人生の半分以上日本にいるんですけど、でもやっぱりカナダ人にとっての仕事は「楽しさ」の要素も入っています。

日本では「仕事」という言葉に少し違う意味の取り方があって。「苦労する」「我慢する」という部分もあるんですね。寺川さんは「仕事」に対してどうですか。「仕事」っていう言葉は寺川さんにとってはどんなものですか。

寺川 :ベストで言うのであれば、自分がやりがいを持って自ら進んでいけることを仕事にできることが、良くも悪くもどんなことがあっても自分で責任を持って進んでいけるじゃないかなと思ってるんですけど。

でも誰しもがそういう仕事に就けるわけでもないと思うので、自分がやってる仕事の中で何かやりがいや楽しみ、そういうものを見つけながらやっていけたらいいものが「仕事」というイメージですね。

デュプイ:いいですね、その考え方。仕事は、もちろん経済的・現実的な話で家族も養わないといけないですけど、それ以外の“purpose”“why”、何のためにやってるかという目的が大切ですね。

ちょっと難しい質問かもしれないですけど、今いろんな仕事をされてますが、今やってる仕事の中では何が一番ワクワクドキドキしますか。

寺川 :やっぱりスポーツキャスターですかね。唯一水泳の枠を超えて、いろんなアスリートの方のお話を伺えるのですごく貴重なんですよね。だからテレビカメラの前に立って話すっていうことよりも、その事前の、現場に出て取材に行って、そのアスリート自身を知るっていうのが大好きです。

デュプイ:なるほど、裏ではいろんなストーリーがあるしね。いろんな壁を乗り越えたり。

寺川 :そうなんです! テレビでお伝えできるのは本当に少しで、でもそのお話をご本人から伺うときってもっと膨らんだ、その人をそのまま知ることができるので、大好きですね。

デュプイ:ランスタッドはキーワードがたくさんあるんですけど、1つは「human forward.」で、人を応援してサポートして前向き進める。それが仕事の意味っていうのは今おっしゃったことですね。
やっぱりコロナがあって、世界が変わってきました。ヒューマンストーリーの大切さが見えてきましたね。

今日のすごい大事なテーマなんですけど、人生のターニングポイント。例えば水泳選手でずっと目標があってやってきて、さぁ卒業っていう人生のターニングポイントですよね。別にスポーツ選手だけじゃないですよ。ずっと歩いてきてターニングポイントになって、悩んでる人に対して何かアドバイスはありますか。

寺川 :そうですね、私自身の場合は、興味のあることはまず「できるか・できないか」で考えずやってみる。それで、やってみた先に「自分に向いてるのか・向いてないのか」っていうのが分かれてくると思うんですけど。

どんなことでもまずチャレンジしてみて、そこからまた自分の「らしさ」を追求できるようにやって来ました。ここまでそういう道を自分で選んでやってきたので、あまり悩んだことはないんですよね。

デュプイ:そうですか、なるほど。今おっしゃったこと、「やってみないと分からないからやってみよう」。キーワードとしてそれはすごく良くて、ずっと悩んで悩んでもしょうがないですから、とにかくやってみると。あとは後悔なし。

寺川 :やってみないと分からないですからね。

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mustのこと以外は決め切らず流動的に

デュプイ:ずっとオリンピック選手でやってきて、自分の人生で大切なもので、卒業してまた水泳関係の仕事やってるんですけど、もう水泳の世界じゃなくて完全に別の仕事だったら何かしたい仕事あるんですか。

寺川 :基本的にいろんなことやってみたい、いろんなことに興味あるんですけど。自分がやりがいを持って楽しく取り組めることが一番なんですけど、何かそこに進んで行く道に周りの人に喜んでもらえるような、一緒にみんなで分かち合えるような、そういうお仕事も今後してみたいなと。

デュプイ:なるほど、先ほどのお話と同じような話ですね。別にプールじゃなくても、仲間みんなで支えあって、ですね。

これは皆さん気になってると思うんですけど、母親で子どもさんがいるんですね。それもバリバリ仕事をやってますし、1日24時間しかないですよね。どうやってマネジメントしてるんですか。

寺川 :絶対に守らなきゃいけないところは確実に24時間の中であると思うんですけど、その他の時間を決め切らないようにしてます。全部「これ」「これ」ってやると凄い自分の首が締められる感じがして、苦しくなってしまうので。「確実にこことここはmustです」っていうところはもちろんなんですけど、それ以外は流動的にできるように心がけてやっています。

デュプイ:大切なことの順番を決めて、後はまあいいかと。
私は会社のCEOなのでタイムマネジメントについてけっこう聞かれます。似たような考え方ですが、まず大きな岩があって、あとは小石。岩というのは大切なこと。順番は例えばまず家族第一で、あとは「この岩を動かすと会社に対してや人に対して、多くのことを与えることができる」という岩の方にとにかくまず優先的に集中する。あと小石はあとでやるとかね。1日のうちに必ず岩を動かすことにするんですね。毎朝「今日の岩はこの3つ」と決めて。

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好きな人が集まるところが私のパワースポット

デュプイ:最後になりますが、「一問一答コーナー」にいきたいと思います。簡単に質問するので直感で答えてください。さあ心の準備、大丈夫ですか。

2番目に好きなスポーツは何ですか?

寺川 :2番目? もう水から離れられないので、海のスキューバダイビングとかサーフィンとか、そういうのが好きです。

デュプイ:大会の直前、「この曲を聞いたらすごいやる気が出る、燃えてくる」という曲は?

寺川 :私はスイッチを入れる時はもう勝手に試合モードに入っている人だったんです。だからどちらかと言うとスイッチを切る方の音楽を重要にしてたんですよ。休む時や試合の合間とかでスイッチを一旦オフにしないとゆっくりできない・リラックスできない人だったので、マライア・キャリーさんをよく聞いてました。

デュプイ:あの時代ですね。オリンピック選手は直前までヘッドホンをしてる人けっこういますよね。

寺川 :聞いてますね。でも音楽聞いてない人もいるんですよ。あれで外の音を遮断している人も中にはいます。

デュプイ:なるほどー! 知らなかった。

一番よく使う絵文字はどれですか?

寺川 :絵文字?

(指で「いいね」のジェスチャー)
わかったとか、よかったねとか。

デュプイ:全部これ?(笑)便利ですね。

すごい忙しいと思うんですけど、休日は何をして過ごしますか?

寺川 :基本的に子どもがやりたいことまず聞いて、やりたいことを優先して動く感じですね。あとは出張がその後続くとかだと、もうひたすらご飯作って小分けにして冷凍したりとか。

デュプイ:子どもさんも水泳が好きですか?

寺川 :本人がやりたいって言い始めてからしか習い事はすべてスタートしてない感じですね。だから水泳も本人たちが「やってみたい」って言うのでスイミングスクールに通っています。

デュプイ:犬派? 猫派?

寺川 :犬です。

デュプイ:コーヒーかティー?

寺川 :コーヒーです。できるだけ1日3杯くらいにしています。

デュプイ:子どもの時のニックネームは?

寺川 :え〜? すごいちっちゃいときは「ポンポコ」って言われてました。

デュプイ:ポンポコですか?

寺川 :ご飯をたくさん食べる子だったので、ちっちゃい時に水着を着たらお腹がこうタヌキみたいな感じで(笑)。

デュプイ:そうですか(笑)。

さあ、今から飛行機の航空券を差し上げます。明日、世界のどこでも行ける。おまけでビジネスクラスで。どこに行きますか?

寺川 :えーどうしよう。どこだろう。やっぱり海の綺麗なところがいいなぁ。南の島で行ったことないところ。

デュプイ:ちょっとお勧めしていいですか。私は以前に行ったことのあるモルディブ。本当に綺麗なところ。本当にお勧めです。

寺川 :みんな言いますよね。はい、そこにします(笑)。

デュプイ:実は私は大阪に18年住んでいました。寺川さんも大阪出身ということで、一番よく使う大阪弁言葉は何でしょう。

寺川 :なんでやねん(笑)。

デュプイ:なんでやねん(笑)。それは怒ってる時?

寺川 :どんなときでも使う。あと最近流行ってるっていう「知らんけど」、あれもう関西だと何気なくみんな使ってる言葉じゃないですか。

デュプイ:何言っても最後に「知らんけど」。便利ですね。

寺川さんにとって、ハッピーな場所は?

寺川 :ここっていう場所じゃなくて、好きな人が集まるところはどこでもハッピーです。好きな人が集まるところが私のハッピーな場所、パワースポットみたいな感じですね。

デュプイ:自分の周りが楽観的な人、前向きな人ばっかりだったら、よりハッピーになるんですよね。

寺川 :そうですね。

デュプイ:今日お話しした今の気持ちをSNSのハッシュタグにすると?

寺川 : #エナジー。ポールさん溢れ出てますよね。エネルギーがすごい方だなと今日思いました。

デュプイ:ありがとうございます。寺川さんにそんなこと言われて、より元気になります!

今日は素敵なお話ありがとうございました。これからもアスリートのセカンドキャリアについて勉強していきたいと思っています。今回のゲストは寺川綾さんでした。

寺川 :ありがとうございました

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